これらのPEDroチュートリアルを使って、エビデンスに基づいた実践のスキルを高めることができます: どのように臨床的な質問をするか その研究結果は妥当か? その治療は臨床的に有益か? 1. どのように臨床的な質問をするか 臨床研究の検索を開始する前に、答えを得るためにどのような質問が適切かを考えることに時間をかけることが大事である。この理由として、質問を適切に構成することで望んでいる適切な答えを見つけることがより簡潔になるからである。このビデオチュートリアルはどのようにPICO(Patient(患者)ーIntervention(介入)ーComparison(比較対象)ーOutcome(評価項目))を決定するのを説明している。 2. その研究結果は妥当か? 低出力レーザーは外側上顆炎の治療に有効だろうか?ストレッチングは脳血管障害後の拘縮の進行を予防できるのだろうか?フラッターバルブの使用により、手術後の呼吸器合併症を軽減できるのだろうか?それらの問いに対する厳密な回答は、適切にデザインされ、適切に実施された臨床試験によってのみ得られます。残念ながら文献の中には、妥当な結論の適切な臨床試験と、妥当でない結論の不適切な臨床試験があります。読者はこれらを区別できなくてはなりません。このチュートリアルでは、妥当性のある臨床試験(または方法論的フィルター)の重要な特徴を挙げています。 理学療法の効果を決定することを目的とした研究には、ある症状を有する集団を集めて、治療前後の症状の重症度を測定しただけのものもあります。対象者が治療期間中に改善した場合、その治療は有効であったといわれます。このような方法論では、治療効果の十分な根拠を提供することはほとんどありません。なぜなら、その観察された改善は治療によるものであり、自然治癒や統計的な回帰(対象者の状態のばらつきの結果として、単に時間経過とともにより「極度」でなくなってしまうという統計的現象)、プラセボ効果、あるいはホーソン効果(対象者が、調査者がどのような結果を求めているかということを考慮することで結果が向上する)といった剰余変数によるものではないということが不確かなためです。これらに対する唯一の対処法は、対照群を設定し、治療を受けた対象者と治療を受けなかった対象者間の結果を比較することです。 比較試験の論理は、平均的に、剰余変数が治療群と対照群の両方に同程度作用するはずであり、試験終了時おける群間の違いはすべて治療によるものであると考えられるところにあります。一例として、多くの急性腰痛は治療しなくても、自然かつ急速に良くなることはよく知られており、対象者が治療過程において改善したことを示すだけでは、治療の効果を論証することにはなりません。治療群が対照群よりも改善したことを示した比較研究は、改善は治療によるものだという強い根拠となります。なぜなら、自然治癒効果は治療群と対照群の両方に作用するはずだからです。治療群が対照群よりも改善したという結果は、対象者の回復には自然治癒以外の要因があることを示しています。注)比較研究においては、対照群はどのような治療も受けないということではないということに注意してください。多くの場合、比較研究では、一般的な治療を受ける対照群と一般的な治療に加え、更なる治療を受ける実験群の間での比較が行われます。もしくは、一般的な治療を受ける対照群と、新しい治療を受ける実験群と比較する試験もあります。 重要な点は、治療群と対照群が類似している限りにおいて、対照群の役割は剰余変数の交絡因子を除外するだけであるということです。治療群と対照群が治療を受けるかどうかの違いを除いて、すべての点で同一であるときに初めて、実験者はその試験の終了時における群間の違いが治療によるものであると断言できるのです。臨床では、対象者を無作為に治療群と対照群に割りつけることによって可能になります。このことにより、自然治癒等の背景因子の効果は群間での違いがないと言えます。実際、対象者が無作為に割りつけられている場合、治療群と対照群の違いは治療による差か偶然による差かに限られ、もしその差がが十分に大きければ統計的検定によって偶然による差を除外することができます。注)この方法においてのみ、治療群と対照群の比較が可能であるということに注意してください。 対象者が無作為に割りつけられている場合でも、治療効果(あるいは効果の無さ)が観察者のバイアスによって歪められているのではないことを確認する必要があります。このことは、研究者が治療の効果を信じている場合に治療結果を無意識に歪めてしまう可能性に関連しています。観察者に「ブラインド」する、つまり結果を測定する人物が、対象者が治療を受けたかどうかを知らない状態にしておくことによってそのバイアスを防ぎます。患者と治療者にも、割り付けられた群を知らせていないことが一般的には望ましいとされます。患者がブラインドされている場合には、観察された治療効果がプラセボ効果やホーソン効果によるものではないと言えます。治療者のブラインドは、困難または不可能であることも多いですが、治療者が治療の有効性について知らされていない場合(例えば、低出力レーザーの臨床試験において、その器具が放射しているのがレーザーなのか色つきの光線なのかを知らされていないような場合)、治療効果は治療者の治療に対する意識によるものではなく、治療そのものである可能性ということができます。 臨床試験の途中で参加をやめてしまう対象者がいることにも、注意すべきです。というのも、この途中棄権は研究結果を歪めてしまう恐れがあるからです。もし、対照群の対象者が研究期間中に症状が悪化したために別の治療を求めて参加をやめてしまった場合、そのことによって対照群の平均結果が本来よりも良くなってしまう可能性があります。逆に、ある治療が対象者の症状を悪化させてしまい、その人が参加をやめてしまった場合には、その治療は本来よりも効果的に見えてしまう可能性があります。このように途中で参加をやめてしまう対象者がいると、臨床試験の有効性が不確実になってしまうのです。もちろん途中でやめてしまう参加者が多ければ多いほど、不確実性は増します。大まかに言うと、対象者の15%以上が棄権した場合、その研究結果には大きな欠陥がある可能性があります。途中で棄権した対象者の数を報告しない筆者もいますが、確立した科学的原則「推定有罪」に基づいて、そのような研究は無効である可能性があるとみなされます。 妥当な臨床試験とは: 対象者が無作為に治療群と対照群に割り付けられていること 観察者のブラインドがされていること。可能であれば患者および治療者もブラインドされていることが望ましい 途中で参加を辞める対象者が少ないこと。 これから理学療法の臨床試験を読むときには、これらの条件を満たしているかどうかを確かめてください。一般的に、以上の条件を満たしていない臨床試験は無効であるか、治療効果の有無に関する強いエビデンスとはみなされるべきではありません。これらの条件を満たす臨床試験は、注意深く読み、その結果をしっかりと覚えておくべきです。 臨床試験の妥当性評価についてもっとお知りになりたい場合は、 Guyatt GH, Sackett DL, Cook DJ, et al. Users’ guide to the medical literature: …
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